2010年04月の記事 (2/6)

ブッチャーvs曙

生まれて初めて、この歳でプロレスを観戦した。しかも、その団体の大スポンサーが席を用意してくださったので、リングサイドの最前列。ただこの団体は、両国国技館での開催にもかかわらず、ぼくの周りでもっとも格闘技に精通している(格闘家の彼氏がいたこともある)M嬢に聞いても知らなかったし、およそ、漫画の「タイガーマスク」程度にしかプロレスの知識がないぼくなど、知るよしもない。

だいたいプロレスといえば、リング外での乱闘がつきもの。乱闘をだらだらとやって両者リングアウトとなり決着を持ち越すことで興行を続けるのが常套手段(それが飽きられてプロレスは衰退したともいえるが)。ゆえに、リングサイドの最前列にいたら何が飛んでくるのか不安だったが(笑)、当然のことながら、リング外の乱闘になっても若手レスラーが客席に波及しないようガッチリとガードしてくれた。

いっぽう、リングサイドにいると、様々にレスラーの私語が聞こえてきて楽しい。あるタッグマッチでは「今日は出番が少ない日だから退屈だなー」とか平気で言っているし、「イテー、あいつ蹴る場所間違えたんじゃねーのか」など。ま、真剣勝負として観ている人がいればガッカリする内容ではあるが。

それと、一人のレスラーが場外に逃げて、リング内にいるレスラーがフライングし、リング外のレスラーに突っ込むシーンはプロレスの見せ場として頻繁にある。でも、リング外のレスラーは飛んでくる人を確実に受け止めてあげることがマストなのだと分かった。当然といえば当然。もしよけられたら大怪我をする。受け止めてくれることが分かっているからこそ、あんなに大胆に飛び込める。おそらくそんな形での練習も積んでいるのだろう。

そうそう、様々に手法を変えて何組もカードが組まれるんだけど、決着がついた瞬間、勝った選手などそっちのけで、手当てのためにフォール負けした選手のところへ何人もがリングに駆け上がる。勝った選手に対し、どうしてそこまで締め上げるんだとリングを去り際に詰め寄る場面もあった。長く元気に興行を続けるには、勝ち負けなんかよりお互いの体調維持の方が重要なのがよく分かる。

初めてづくめで話が大きくそれたが、この興行。もちろんセミファイナル、ファイナルとタイトルマッチもある。でもそうやってメインに進むほど肩入れする選手もいないぼくには退屈。一番楽しかったのは、ブッチャーvs曙という客寄せのカード。

ブッチャーを見た話を友人にすると、最初「あ、在りし日のブッチャーに似たレスラーがいるんだね」といった反応だが、「在りし日」のブッチャー、そう、アブドーラ・ザ・ブッチャー、その人なのである。

年齢については様々な説もあるようだ。けど、70歳を越えていることは確か。在りし日に彼と対決した面々は、ジャイアント馬場を含め物故者も多い。場内暗転して往年のテーマ曲、ピンクフロイドのOne of These Days(邦題は「吹けよ風呼べよ嵐」だったかな)で登場。もちろんピンでの対決は無理なので、三人ずつのタッグマッチだが、他の選手に手を引いてもらいつつよちよちと。

それにしても巨漢(というか単なる肥満)。日本人で、あの歳で、あれだけ太っていたら、おそらく生きてられないだろうに、西洋人は心臓が強いんだなあ。

ブッチャーvs曙のタッグマッチは、まさにコント。凶器による流血も、必殺技の地獄突きもエルボーもお約束どおり。ほとんど動けないので、タッチをしてもコーナーポストに座って休んでいる姿が印象的(本当は反則なんだけど、レフェリーも何も言わない 笑)。


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結局フォール負けして、またよちよち歩きでリングを後に。去り際に「地獄に落ちろ」とか「また戻って必ず沈めてやる」みたいなことを英語で叫ぶのもお約束か。ただ、その英語が誰も分からず訳す人もなく場内ポカーンといった感じ。それを理解できるであろう曙だけが、カラカラと笑っていた。

最近はいつも、この世の終わりみたいな難しい表情しか見たことのない曙だったが、あのさわやかな笑顔には、やっぱりハワイの男なんだなーと納得した。

余談だが、ブッチャーvs曙。いったい体重は何キロの組み合わせなのだろうか。それが証拠に、試合中リング下に敷いてある分厚い木材の一部が折れたようで、終了後予期せぬ休憩タイムとなった。