2011年05月の記事 (1/1)

どうした「喜楽」

渋谷の道玄坂に「喜楽」というラーメン店があって、ぼくが東京に越してきた20年以上も前から同じ場所でずっと営業をしている。ぼくが東京初心者のころ、当時は数少なかったガイドブックで「喜楽」を知り、通うようになった。

現在は改装してしまってその面影は残らないが、行き始めたころは、麺を茹でる大きな鍋をまあるく囲むようにカウンター席があり、ひげの大将による、麺の鍋への投入から中華麺完成までのパフォーマンスも一見の価値があった。
その後、どういう経緯か突然店舗を改装して二階建てにし、一階が厨房と小さなカウンター。二階がテーブル席の、いわゆる普通の中華料理屋風になり、以前のダイナミックなひげの大将の動きもなりを潜め、味も落ちたと世間からは言われた。

でも、深みのある澄んだスープと弾力はあるのに腰は柔らかい平打ちの麺、そして当時はゴミラーメンとも呼ばれた、ゴミのように浮いている焦がしネギ(表現は悪いが、実はこれが「喜楽」ラーメンの最大の特徴であり、うまさを際立たせる役割を担っていた)。その三種が独特のシンプルな個性と完成度を生み出し、味の足し算掛け算が全盛の今のラーメン界においては逆に新鮮。味が落ちたとしても変わらぬベストなラーメンと、個人的には思っていた。

さて、先日夜。めずらしく渋谷で一人になったので、思い立って「喜楽」へと足を運んだ。少し小さくなったようにも感じるがひげの大将は健在。いつものように中華麺をオーダー。一口食べて、ん。麺が違う。上述したように、麺・スープ・焦がしネギが「喜楽」の基本中の基本。その麺が平麺からふつうの丸い麺になっている。しかも最近の流行なのか固めに茹ですぎてボソボソ感ばかりが口に残る。えらいこっちゃ。「喜楽」の麺が変わってしまった。スープをも巧みに吸い込んだ独特の平打ち麺はどこにいったのだ・・・。

あわててその場で、ラーメンならこの人、大崎裕史大兄にメール。いつもならすぐに返信をくださる大崎大兄だが、半日ほど返信がなかった、と思えば、すぐに翌日の昼に大崎さんも「喜楽」へと向かったらしく(さすが早い)、店を出た後、確かに変わりましたね・・・とメールをくれた。

さらに大崎さんは一歩踏み込んで、お店の方に「麺が変わりましたね」と質問をしたそうだが、店側は「20年前に変えて以来、変えてない」との回答。すくなくとも平たい麺が丸い麺に変われば間違いようがない。もしくは震災の影響等で仕入れが変わったのか・・・。

いずれにしても、20年以上同じスタイルで作り続けてきた「喜楽」の麺が変わったというのは、個人的には一大事。心の拠り所の一端が崩れたような気がして、店舗改装時と同じぐらいの寂しさにうちひしがれている。