2017年02月23日の記事 (1/1)

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日本酒の末路

ぼくは自分の著書では、日本酒と書かずに清酒としている。
その意味も同時に著しているが、子供のころ日本酒が大好きだった祖父に、
「おじいちゃん、日本酒好きなんやなあ」といったところ、
「なにいうてるねん。これは日本酒とちごて酒や。なんで日本人のわしらが、自分たちの酒のことをわざわざ日本酒といわなあかんねん。外人でもsakeというやろ」と怒られたことに起因している。

そして今回は清酒の話である。
今ちょうど流れているJR東日本のCM(おや、またテレビの話のようだ)。
♪冬のごほうび~冬のごほうび・・・とかわいい歌が流れ、その後にナレーションが続く。
「東北は米がうまい。だから酒がうまい。来たれのんべい」
東北は米がうまい。そしてうまい酒もある。ただそこには何の関連性もない。
食べるブドウとワイン造りに使われるブドウが違うのと同様に、
酒造りに使われる米と、ぼくたちが普段食べる米は別の種類なのである。

酒造りに使われる米の最高峰は、兵庫県もしくは岡山県産と言われている。
東北の蔵は、農家と酒造りに適した米を地元で生産する努力をされ、そんな米を使って個性的な清酒を醸すことに成功しているが、ほとんどは食米とは別の種類。また、それぞれの蔵が自ら最上に位置付けている酒には、兵庫県産の米を使っている。
天下のJRが基本的に間違ったナレーションをしていること自体、母国の酒の成り立ちを軽視しているとしか思えず、またまたおじいちゃんに怒られそうである。

ただ、個人的にはもっと悲しいCMがこの冬に流れている。
それは月桂冠の糖質カットの酒である。
わざわざ米から糖質を作ってそれを発酵するという作業で清酒は作られるのに、その糖質をカットするという本末転倒ぶりに目を覆いたくなるが、それよりもっと救いようがないのは、糖質カット日本酒のCMだ。

そのCMで流れるナレーション。
「Smooth&Dry つまり淡麗辛口。」
悪夢だ。

清酒は淡麗辛口でなければならない、という歪んだ間違った概念が過去に出来上がり、新潟を中心に個性のない水みたいなシャバシャバ酒ばかりが売り出され、その結果清酒の発展が20年は遅れたと言われている。
やっと今、その矛盾や無意味さに気づいた若手の蔵人が、旨口ともカテゴライズされるそれぞれの蔵の個性を発揮できるテイストの酒を醸し始め、清酒の業界は活況を呈してきた。本当に喜ばしくて楽しみなことだ。
(といっても、今だ大手の酒蔵の売り上げがベースとなる統計ではトータルの売りは下がっていると聞く)

客は今でも、居酒屋で酒の好みを聞かれると「辛口がいいな」と普通にいう。
蕎麦に何の疑問も感じずに七味唐辛子を入れるのと同じ、反復動作としか思えない現象だ。
おいしくて特徴のある清酒を集めるようになった居酒屋のスタッフは全員、心の中で笑っている(実際に笑うやつもいる)。
最近は平気で、当店に辛口の日本酒はありません、と言ったりメニューに書いているところもある。
辛口とおっしゃいますが、具体的にどんな味でしょうかと質問するヤツもいる。もちろん実際に答えられる客はいない。たぶんぼくに聞かれても、答えられないだろうけど。

ビール業界はスーパードライという一つのブランドだけで、普通のビール以外に「辛口」という市場を作った。そこには極めてマーケティンク的にすぐれた仕掛けがあったからに他ならない。いっぽう清酒は、端麗辛口と縛ることによって、暗黒時代に突入した。月桂冠ほどの大手なら、そんな時代の記憶もあるだろうに・・・。
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