原田という銘酒

山口県に、「原田」という銘酒がある。
日本酒において最高の語りべの一人と尊敬する、「赤星とくまがい」の赤星さんから、この酒はいいですよと勧められて以来、メニューや冷蔵庫に見つけたら必ず頼むようにしている。ただ、今だ見つけることが困難な一本だ。

先日とある五反田の居酒屋にいったときのこと。その店は例えば滋賀の「神開」など、レアな地酒を置いており、そこに「原田」も見つけて、オオッと内心快哉を叫んだ。

ぼくは外でほとんど生ビールを注文しない。もちろん大変おいしい店もある。でも、それと同数ぐらい掃除や洗浄を怠っている店も存在し、がっかりすることも多いからだ。
その店で、いつものように瓶ビールを頼んだら、なんと冷えが足りない。
冷えていないビールと下手な文章ほど嫌いなものはない。下手な文章も書いた人に愛情があれば読めるが、冷えてないビールは救いようがない。早く「原田」が飲みたい気分はますます拍車をかけるのである。

その店には二銘柄のビールがあったので、二本目は最初頼んだものとは別にしてみたが、同様に冷えが足りない。
しょうがないぞと、まだかなりビールが残っている状態で、原田ください!と店主に声をかけた。後で反省するに、それが誤解を生んだかもしれない。

ハイヨッと軽い返事が返ってきたので、ああ、これで冷えてないビールともおさらばだと思うものの、店主はせわしく動きつつも、原田を用意する、もしくはサーブするようスタッフに指示する気配がない。
耐えきれず、再び、原田ください、とコール。
ハイハイと店主も分かってる風・・・。

それでも、店主他、スタッフもいっこうに動かない様子。
おや、どうしたのだろう。何か、どこかに間違いか勘違いがあるのではないか。
そこでぼくは、すみません、日本酒の「原田」をくださいと、丁寧にそして大声で言った。

すると店主は、
なんだ原田ですか、サラダだと思って、サラダ作っちゃったよ。
原田ねえ、今売り切れです。との回答。

原田が飲めるという喜びから一気に奈落の底へ。
あ、じゃ、そのサラダ、いただきます、という気も起きず、
(というか、生ビール同様、野菜の質も疑問なので、外でサラダを注文することはほとんどないですが)
たまたま視野に入った、臥龍梅を。
まあ、おいしかったけどね。