日本酒とは

一般に、米を発酵させて作る醸造酒を「日本酒」と呼んでいる。
この言葉は、マトモに考えてみると少し不思議だ。日本語では、わざわざ日本と付けなくても、「酒」という文字がすなわち日本酒を指すのではないだろうか。単に酒と言えば通じるものを、わざわざ日本酒と呼ぶところが、なんとなく洋酒へのあらぬ対抗意識というか卑屈さがにじみ出ている感じがする。

洋酒、葡萄酒、麦酒、そして「酒」。

かくいうぼくも、大学生のころは何の問題意識もなく日本酒という言葉を使っていた。あるときすでに他界した祖父と飲んでいて、「おじいちゃん、日本酒好きやなあ・・・」みたいなことをつぶやくと、「あきらくん、これはなサケやで。なんで日本酒なんてゆうねん。おかしいやろ。サケちゅうんや。サケ持ってこい や」と叱られた。

その時のショックは意外と大きく、ウイスキーの水割りやコークハイが主流だった当時、日本酒党だとイキっていた自分が恥ずかしくなった。

それ以降、ぼくは機会あるごとに「酒」と表現しガンバって説明もするが、酒の専門店でもほとんど通じない。目を海の外に向けてみると、欧米では日本酒のことをsakeと言うわけで、外国人のほうがよほど日本語に精通していると言わざるを得ない。

さて、先日酒卸のベンチャー企業を総帥する友人と痛飲した。
彼は、江戸時代から続く酒問屋に生まれながら、最高学府や海外でも経営を学び、ITや最新の経営手法を駆使して新しい酒卸会社を立ち上げ成功した人物である。そして、10年間で充分にやりつくしたと確信した彼は、あっさりとトップの座を後進に譲るという潔さなのだが、その辺のことは別の機会に書きたい。

その彼が、日本酒のことを「清酒」と呼んでいた。
「清酒」という表現にえらく感銘し、上記の祖父の話などをしていたら、「伊藤さんも分かっていただけますか・・・。ぼくも日本酒という呼び方がとてもイヤなんですよ」という。さすが酒を愛してやまない男。こんな人物に販売される酒はシアワセだ。ぼくも今度から清酒と呼ぶことにしよう。

ところで、酒税法の分類では、日本酒を「清酒」としているらしい。彼曰く、「清酒と注文しても、居酒屋でもなかなか通じないんですけどねえ」とのことだが。