ザックの通訳

イタリアには何度か行ったとこがあるけど、イタリア語については全く理解できない。
せいぜい分かるのは、簡単な挨拶とメニュー程度である。
なので、これから書くことは、イタリア語がご専門の方にしてみれば、大きな間違いかもしれない。

それを前提にして、自分の肌で感じたこと。
ザッケローニ新監督のイタリア語通訳(矢野大輔さんというらしい)は、とてもすばらしい。今の新しい日本代表チームが、すばやく監督の意図するところをくみ取り、都度話し合いながらグングン成長していく過程を見ても、いかに通訳の伝える能力が高いかを想像することができる。

実は、ぼくもイタリア語やフランス語の通訳をお願いして、実際にヨーロッパで仕事をしたことが何度かある。その際、クライアント側が政府の要人にも対応するキャリア豊富な方にお願いしてくださったのだが、自分のチーム専用とはいかない様子だったので、現地に住む友人を介して、もうひとり当方持ちで通訳を雇った。

その時来てくれた男性とは今でも付き合いのあるいい出会いだった。ドレッドヘアーに大阪弁。敬語も完璧には使えない兄ちゃんで、聞けば漢字はあまり読めないという。「おいおい、そんなんで大丈夫か?」と当初は不安に思ったものの、実に通訳センスに優れ、上手にコミュニケーションが作れる、とても気持ちのいいヤツだった。

キャリアもあり自信のある通訳の方なればこそ、もしかしたら相手のいうことを一言一句すべて訳して伝えなければならないと考えるのかもしれない。でも、ぼくがなんらかのオーダーを出し、それを通訳して相手が即座に渋い顔をしたり首を横に振ったりすれば、それは言葉を介さなくてもNOの合図。真面目な(というか、自分が優れていると勘違いをしている)通訳の方は、それもわざわざ「今回の場合は受けられないです」みたいな訳を付ける。

そんなナンセンスな会話のキャッチボールは、時間もかかるしコミュニケーションもギクシャクする。まして、相手側は首を横に振っただけなのに、何らかの言葉で通訳されると、自分が伝えたい以上の情報が通訳から勝手に伝わっているのではないか、と、いぶかってしまう。

その点、ドレッドの兄ちゃんは、最初からほとんど必要最小限しか訳していないように感じた。言葉が足りているのかなあとは思ったものの、彼を通じで会話を進めれば進めるほど、ストレスを感じることなく言語の分からない者同士円滑なコミュニケーションの取れることが分かってきた。しかも、こちらが重要なことやぜひとも訴えたい内容は、その熱意を汲み取って熱く厚く語っていることも気づいた。

最終的には、クライアント側もそのキャリア十分の通訳を使わずに、ドレッドの兄ちゃんに来てくれ来てくれとオーダーし、後半は引っ張りダコだった。一緒に仕事をしたすべてのみんなが、兄ちゃんの通訳センスを実感したんだと思う。

さて、ザッケローニ監督の通訳、矢野さんのこと。
韓国戦に勝利し、監督のインタビューとなったシーン。

いつも、かったるいなあと思うのだが、インタビュアーは、自分がステキな言葉を用意してきたと誇示するかのようにダラダラと長い質問をする。と、矢野さんは、質問の後半にかぶせるように一言二言で監督に伝え、監督は、インタビュアーの日本語が終わると同時ぐらいに、しゃべりだした。
そして、続いてのダラダラと長い日本語の質問にも、ほとんど二言ぐらいで伝えるものの、監督からはたっぷりと答えを引き出している。矢野さんがいれば、冗長すぎる日本人のインタビュアーなんて不要じゃないのかなあとさえ思えるのだ。

さてさて、明日の夜。ゲームの成り行きが最大の注目ではあるが、またまた勝利監督インタビューで冴えわたる矢野さんの通訳も楽しみだ。